肥満の有病率と経済成長の間に逆U字型の関係が存在するという肥満のクズネッツ曲線(OKC)に関する豊富な研究は、モデルと変数の選択の不確実性により、一貫した結果を示していません。本研究は、2000~2020年の84か国のパネルデータを用いてこの問題に取り組みます。国と年の二方向固定効果(TWFE)モデルは、OKCが逆N字型をとり、肥満と富の関係に複数の転換点があることを示唆します。モデルの不確実性を考慮するため、幅広い潜在的決定要因に対してベイズモデル平均(BMA)を適用します。逆N字型の関係は頑健であり、BMAは経済、社会文化、環境の各領域で主要な予測変数を特定します。本研究の結果は、単一の「転換点」では肥満の移行を過度に単純化してしまうこと、対象を絞った介入では経済発展の多段階性を考慮する必要があることを示唆します。
国が豊かになると、やがて肥満は減るのでしょうか。よく知られる肥満のクズネッツ曲線は、上昇の後に下降する関係を想定します。本論文は、単一の統計モデルを選ぶのではなく、多くの説明の可能性を考慮した場合にも、この単純なパターンが維持されるかを検討します。
分析対象は2000~2020年の84か国です。世界保健機関の年齢調整済み成人肥満推計と、世界銀行の経済・社会・環境指標を組み合わせています。肥満の有病率は、18歳以上の成人のうちBMIが30 kg/m²以上の人の割合です。所得には、2015年固定価格の米ドル表示による1人当たりGDPを用います。
ベイズモデル平均は、複数のモデルの結果を、それぞれがデータから得る支持に応じて重み付けして統合します。国と年の固定効果はすべてのモデルに含め、その他の61の候補変数をモデル選択の対象とします。
主要な結果は逆N字型の関係を支持しています。推定された所得成分は、最初に下降し、次に上昇し、最後に再び下降します。所得の3項はいずれも、両方の事前分布で事後包含確率が1.00となっています。同じ符号のパターンは、国と年の二方向固定効果推定でも確認されます。
| 所得の項 | 固定事前分布:事後平均 | 頑健な事前分布:事後平均 |
|---|---|---|
| 1人当たりGDPの対数 | −189.358 | −187.464 |
| 1人当たりGDPの対数の二乗 | 21.620 | 21.405 |
| 1人当たりGDPの対数の三乗 | −0.804 | −0.796 |
これらは表2の係数であり、1,195の国・年の観測を用いて推定されています。各項はまとめて解釈する必要があり、単独の係数は所得が1米ドル増えた場合の効果を表しません。モデルは、森林面積、再生可能エネルギーの利用、人口密度、農業構造などの指標とも頑健な関連を示しています。
図は、表2に掲載された両方の事前分布による事後平均から、所得成分を直接描いています。各曲線は、1人当たりGDPが2015年固定価格で10,000米ドルの場合を基準にしています。そのため、縦軸は肥満の予測水準ではなく、パーセントポイントで表した差です。横軸は対数目盛で、表7に記載された観測所得範囲を示します。この基準化によって、曲線の形や転換点は変わりません。
曲線は事後平均のみを示しています。論文には各係数の周辺標準偏差が掲載されていますが、曲線全体の適切な不確実性の帯を求めるには、係数の同時事後分布または共分散が必要です。そのため、図に帯は加えていません。これはパネル推定の独自の再構成であり、図1~2にある記述的なプール推定の曲線を転載したものではありません。
結果が示すのは関連であり、因果効果ではありません。国の平均値から、個人の体重が所得にどう反応するかを判断することはできません。曲線の低所得部分は、より少数の国と、信頼性が低い肥満サーベイランスに依存しています。説明変数を5年遅らせた検証でも所得の各項と符号は維持されますが、時間とともに変わる交絡要因や逆因果を除去することはできません。
実践的な示唆は、単一の所得の転換点だけに注目しないことです。経済発展と肥満は複数の段階を通じて関連しており、所得が高まるだけで肥満が減るとは限りません。
オープンアクセスの出版論文には、方法、表、付録が含まれています。データ利用に関する記載では、研究に用いた完全なデータセットは、合理的な要請に基づき責任著者から入手できるとされています。
Restrepo Gómez, K., Du, H., & Mendez, C.(2026)。“Wealth and weight revisited: A Bayesian model averaging approach to the Obesity Kuznets Curve.” The European Journal of Health Economics. 2026年10月8日公開。DOI: 10.1007/s10198-026-01998-1。オンライン先行公開であり、巻・号・ページはまだ付与されていません。
インフォグラフィックは、表2(PDFの5ページ)の数値結果を独自に描き、表7(PDFの13ページ)の所得範囲を用いています。論文はCC BY-NC-ND 4.0の下で公開されています。出版社の図の改変や転載は行っていません。